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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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夜空に咲く満開の花の如く
愛情シリーズ


第一話 夜空に咲く満開の花のごとく




 風も無く、蒸し暑い。
 夏という感じが肌を通して伝わってくる。
 夏は蒸し暑い上に、ただでさえ好きでない虫が大量に発生するので好きではない。
 大体は外に出ると不機嫌になる。
 けれど、今日は特別だった。
 最近雨が続いていたが、久しぶりに雲ひとつ無い夜空の今日。
 この夜空に、輝く大きな花が咲き乱れる日だから。
 この日のために、随分と前から頑張って、定時で仕事を終えられるようにスケジュール調整をしたし、特等席もこうしてしっかり席を確保した。
 今は、そんな努力が報われて、良く冷えた烏龍茶を飲みつつ花火が打ちあがるのを楽しみに待っている。
 
 本当に、これほど純粋にイベント事を楽しもうと思ったのは久しぶりだ。
 きっと、特等席である、背の高いマンションの最上階にあたるこの部屋の主と、少しだけ長い間、同じ時を過ごしたからだろうか。

 
 私はまだ咲かぬ夜空の花を待ちながら、丁度これくらいの時季に彼と出逢った時のことを思い出した。
 


*****




 不愉快に蒸し暑い季節。

 それなりに真面目な学生をやっていた私は、ある日の帰宅時、最寄駅から自宅に向かって歩いて二分ほどの所にある、車は通ることが出来ない細く短い橋の上で、タバコをふかして川を眺めている、いまでは珍しくなった学ラン姿の少年が目に留まった。
 通りかかる際に見た少年の顔は実に不機嫌で、タバコも実に不味そうに吸っていた。
 わざわざ不味そうに体に悪いものを吸う意味がどこにあるのかと思ったが、それをあえて言うほど親しい人物ではなかったので、ただ少し気にしただけで、学ラン姿の不良少年の後ろを通り過ぎた。

 その次の日の夕暮れ時。
 昨日の不良少年は、またも同じ場所、服装で、同じく川をを眺めながら、やはり同じく不味そうにタバコを吸っていた。
 だが、何かあったのか、顔中青痣だらけだった。
 普通に考えて、見た目は完璧に不良少年だ。喧嘩でもしたのかと発想するのが当然だが、タバコを持っている手は人を殴るほどにゴツく逞しい手ではなく、なにより手を怪我してはいなかった。
 人を殴れば普通の人は自分の手も同じく傷めるものである。
 そうでないのなら、誰かに一方的に殴られたか、あるいは不本意な事故にあったかどっちかしかないだろう。
 とても痛々しいが、結局は自分に関係のない人のことだ。
 私はまた、昨日と同じように、不良少年の後ろを通り過ぎた。
 通り過ぎる際に、ちらっと不良少年の視線がこちらに向いた気がした。
 
 それからしばらく、その不良少年を見ることはなかった。
 
 
 不良少年を見かけなくなってから一週間ほど経った。
 学校からの帰宅途中、最後に見かけた時と同じ場所、同じ服装で、やはり同じく不味そうにタバコを吸っている不良少年が居た。
 だが今回は、川の方向を向いておらず、人の通る道の方を向いて立っていた。
 そのためだろうか、普段はもう少し人通りが多いこの橋には、人影が皆無だった。
 初めて横顔以外にまともに見た不良少年の顔は、この間見た時にあった盛大な青痣がまだ痛々しいのを覗けば、実に端整な顔立ちをしていた。
 それは、真っ当な格好で真っ当な立ち振る舞いをすれば、相当持てるだろうと安易に想像できるほどだ。
 目を少し細めて、いいもが見れたと少し嬉しく思いながら、まだ同じく不良少年の前を通り過ぎようとした。
「あんた、いつもここ通るね」
 驚いて振り向くと、吸っていたタバコを地面に落として足で火を消し、ゆっくりと私の方へと歩いてきた。
 一体何事だろうかと思ったのは最初の瞬間だけで、タバコもポイ捨ても嫌いな私は、自分でも思っていなかったほどの不機嫌な声をだしていた。
「地面にタバコを捨てるな、不良少年」
 この言葉に、不良少年は歩みを止めて、少し間を置いてから面倒くさそうに、けれど、素直に捨てた吸殻を拾って適当に胸ポケットにしまった。
 その行動に、思ったよりはまともな少年だと関心したが、それは戯言だ。
 再び私向かって歩いて来た少年は、今度は私の目の前で立ち止まる。
「アンタさ、人生下らないなと思ったこと・・・・・・無い?」
 目の前に立たれると不良少年の方が背丈が随分と高いため、声は上から降ってくるような感じだ。
 私は見上げた。
 まだ青痣が痛々しさの残る顔には、とてもつまらなそうな、何もかも諦めたような、そんな表情が浮かんでいる。
 こんな表情を、自分よりも年下の少年がするものなのだろうか。
 なんとも言えない気持ちがこみ上げてきた。
 この不良少年は、何故私に声をかけたのだろう。
 何か意図があるのだろうか。何か意味があるのだろうか。
 唐突な問いに考えを巡らせたせいか、私はただ、「はぁ?」と顔をしかめて答えることしか出来なかった。
 不良少年はそんな私の言動に怒りもせずに、黙って私を見下ろしている。
「無いよ」
 私は不良少年の問いに対する答えをやっと導き出し、見下ろす目をしっかりと見つめ返して答えた。
 すると、不良少年は何に驚いたのか、少しのけぞり半歩後ろに下がると、再び口を開いた。
「なんで無いわけ? なんでアンタは人生下らないと思わないわけ?」
 声は少し震えていた。
 先ほどとは違い、何かを憎んでいるような、それでいて悲しんでいるような、感情的な表情も浮かんでいる。
「そんな事を考える事こそ下らない。人生を下らないものだと決めるのは自分自身じゃないか」
 一拍間を置き言葉を続ける。
「自分の人生に他人がどんな価値をつけようと、それは他人の価値であって自分の価値じゃない。自分の人生の価値を決めるのは自分だ。決めた価値の良し悪しを決めるのも自分だ。つまり、人生下らないと価値をつけたのは君自信だ。そう思っているのは君自信だ。だから他人も同じことを思った事があるのかと思ったの? 君の価値は、誰もが持っている価値じゃないよ」
 我ながら、よくもこんなに偉そうな事を言えたものだと思った。
 本当は自分でもよくわかっていないのに。
 けれど、口に出して言ってみたら、それは決して間違ってはいないとも思う。
「アンタ、周りに理屈っぽいって言われない?」
 少し怪訝な顔で不良少年は空を見上げて言った。
「何よ」
 自分の片眉がつりあがるのがわかった。
「アンタ敵多いだろ」
「だから何」
 今度は眉がよる。
「アンタ、変だよ」
「君さ。さっきから私に何言いたいわけ?」
 あげた顔を戻した不良少年の目を、しっかり見据えて言ったのだが、今度はまったく動じない。
 だが、不良少年は少しすると、ふいっと顔を横に逸らすと、小さくつぶやいた。
「・・・・・・アンタみたいに、なれんのかな・・・・」
「はぁあ?」
 気の抜けた声がでてしまった。
 その声に対して、不良少年は少し唇を尖らせる。
「アンタを初めて見たとき思ったんだ。アンタなら答えをくれそうだって」
 不良少年はそこまで言って、ちらっと瞳を私のほうへ戻した。
「話せば少しはわかるんじゃないかと思ったんだ・・・・下らない人生がどうにかなるんじゃないかって・・・・・」
 その言葉を聴いて、私は少しの間黙っていたが、ついに堪えきれなくなり、その場で盛大に笑い出したのだ。
「あっ・・・・はははははははっ!!」
 この不良少年は、不良な事をしているくせに、一般的に真面目とされる学生よりも実に真面目だ。
「なんだよ、笑う事ないだろう。ていうか、アンタ笑いすぎっ!」
 一向に笑いは収まらない。
 こんなに笑ったのは久しぶりだ。
 笑いが収まる事には、夕暮れ時をとうに過ぎ、空は星が瞬き始めていた。



 そう、私と彼とは、そんな風に出逢った。




*****




 夜空に花が咲き乱れる。
 
 花火は綺麗だけれど、私は花火の打ちあがるドンッという心臓に響く大きな音が花火よりも好き。

 今年はこの美しい花をさえぎるものは何も無い。
 音も実によく聴こえた。

 花火の音にまじって、どこからか風鈴の音が聴こえた。
 少し、風がでてきたようだ。

 ふと、この場所から程近い浜辺を見下ろすと、花火を見上げる一組の男女が目に入った。
 黒地の浴衣に赤い帯をしたかわいらしい少女と、少し気が弱そうだけれど優しそうな少年。
 少年は夜空に咲き誇る花火よりも、隣に立つ少女を見ているほうがいいようで、ほとんど空を見上げては居ない。
 その様子を見て、私はついつい笑ってしまう。
「初々しいなぁ」
「何が初々しいんです?」
 穏やかに低く、男らしい声が聞き返してきた。
「いいタイミングだね、不良少年。あそこ見てみなよ」
 スイカを切って盛ってる皿を持った、この部屋の主であるかつての不良少年は、指し示された場所を見て、私と同じく笑った。
「うん。確かに。いいなぁ、若いって」
「私より若い癖に、私よりも年寄り発言」
 私はスイカを乗せた皿を、ベランダに一つしかないティーテーブルの上に置き、かつての不良少年は、出逢った頃の少年らしさは殆どない。
 言葉も敬語で大人らしく、容姿も日を追うごとにハンサムさに磨きがかかっている。
 素がいいにしても、さすがに末恐ろしいほどのいい男っぷりだ。
「仕事はまだ忙しいんですか?」
「そこそこね」
「そこそこかぁ」
「そう。そこそこ。君こそ大学はどうなの?」
「学生ライフを堪能してますよ。良くも悪くも愉快な友人達が色々してくれるし、ちゃんと楽しんでますって」
「昔はどうしようもなくへなちょこだったのになぁ」
「・・・・・・その節は大変お世話になりました」
「うん。大変お世話しました」
 情けなさそうに肩を落とした姿が、完璧なように見える彼を愛らしく見せる。

 ドンッ!
 
 夜空に一際大きな花が開いた。
 まるで、夜空に一瞬だけ赤焼けた空を思い出させる色だ。
「色々な色があるのに、この色が一番好きなんだよねぇ」
 彼と出逢ったあの頃の、空と同じ色だ。
 きっとそれも、この色の花火が好きな理由の一つに違いない。
「あのときの空の色みたいな色ですね」
 彼が何気なく言った言葉にドキリとした。
 偶然だと思うけれど、なんだか心を見透かされた気分で気恥ずかしい。
「どうだろうなぁ。なんせあの頃の君には、私が世界で最も綺麗な女に見えたくらいだから、結構違う色じゃないかと思うよ」
「今でも世界で最も綺麗に見える女性は貴女ですから、そう違う色ではないと思いますけど」
 彼の心はあまりにも真っ直ぐ過ぎる。
 どうしてこう、思ってる事を簡単に言葉に出来てしまうのだろうか。
「褒めても何もでないよ」
 私はこうして捻くれた言葉しか言えないのに。
「酷いなぁ。ちゃんと心からそう思っていったのに」
 彼はいつも真正面から私を見続ける。
 だから、皮肉な言葉も時に空振り。
「なんでこれで彼女居ないの、君は」
「理由を知ってるくせに聞きますか? それを」
 ふてくされた顔をして、私を見る彼。
 この話をすると、必ず話を煙に巻くことを彼は知っている。
 だから、徐にスイカを手により、しゃりしゃりと食べ始めた。

「まあ、そのうちね」
 花火の音にかき消されて、つぶやきは彼に聞こえない。
 なんて自分はずるいのだろうかと思いながらも、今はそれでいいのだとも思ってしまう。

 美しく咲き誇る天空の花を見上げて微笑んだ。


 この恋の火はそうそう簡単に消えてくれそうにない・・・・・・



 - 夜空に咲く満開の花の如く - Fin





2008⁄07⁄01(Tue) 19:43

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