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オリエント王立交響楽団物語 第一楽章
オリエント王立交響楽団物語 (全4話)


【第一楽章】 猫の音楽隊









 ここは、東大陸一の大国オリエント。
 ため息すらも音楽となると言われる音楽を愛し音楽を愛する国である。
 王都で年に一度、三日間を通して行われる大祭が間近に迫った今日、国内に数百と存在すると言われる音楽隊の多くが王都を訪れていた。


 壮年隊長のクラウ・カッツェが率いるカッツェ音楽隊は、結成して丁度十年目を迎える小さな音楽隊である。
 クラウ・カッツェは、今より十一年前に国内最高峰の楽団であるオリエント王立交響楽団の団員であったが、そこでの生活は過酷を極める物であり、精神的に追い詰められた彼は、十分な実力を発揮する事が出来ぬまま、僅か半年で解雇されてしまった。
 その後、食いつなぐためにチェロを弾き、彼の弾いたチェロの音色に魅かれて共に演奏をしながら旅をする仲間が増えて行き、カッツェ音楽隊を結成することとなった。
「やっと見えてきましたね」
 幌のついた簡素な馬車の業者台で手綱を弾いていた青年シュヴァーンが、隣に座るクラウ・カッツェに声をかけた。
「相変わらず、美しい街並みだ」
 心配そうな表情を浮かべるシュヴァーンの頭を優しく撫でて、クラウ・カッツェは王都を穏やかな表情で見つめた。
「あそこは音楽家達の楽園であり地獄だ。音楽家として生きるならば、遅かれ早かれ必ず訪れなければならない場所でもある。私個人にとっては地獄であったが、我が音楽隊にとっても地獄であるとは限らない」
 晴れ渡った空の下、カッツェ音楽隊の馬車は王都へと続く石畳の上をゆっくりと進んで行った。




 王都に入り、なんとか宿を見つけて一息ついた一行は、一階にある酒場に降りて夕食を取る事にした。
 王都の宿は酒場と兼業している所が多く、祭りが近いと言うのもあり、それほど大きな場所で無いにもかかわらず、酒場はかなり混雑していた。
 愛嬌のある給仕がくるくると忙しく店内を歩きまわり、出来たての食事と酒が次々と机の上に並べられていく様は、田舎町では観れない圧巻の光景である。
 人数分の食事とブドウ酒を頼むと、カッツェ音楽隊はカウンター席に近い円卓に腰をおろした。
「小さい頃に一度だけ、音楽祭を見に来た事がありましたが、やはり凄い賑わいですね」
 シュヴァーンは店内を一望してから、期待と不安が混ざった複雑な笑顔で、先に運ばれてきたブドウ酒に口を付けた。
 クラウ・カッツェ以外は、皆シュヴァーンと心境は同じようで、普段よりも酒の進みが早くなっているようだった。
「今晩は体を休めて、明日には買い出しと演奏場所を探しに行くとしよう。場所探しはなかなか骨が折れると聞いているから、早めに動くに越したことは無いしな」
「おや。あんたらは音楽祭で演奏するのかい?」
 隣の円卓に座った恰幅の良い男らが、興味心身といった態度で話しかけてきた。
「ええ。そのつもりですよ」
 穏やかな口調でクラウ・カッツェが応えると、男達は目を丸くして驚いた顔をしつつも、にやりと笑った。
「腕に自信はあるのかい? そうでなきゃ、参加は自嘲した方がお前さん達の為だぜ」
「音楽祭と銘打っては居るが、昔と違って今じゃ音楽の品評会みたいなもんだ。いい演奏が出来なけりゃあ評判はガタ落ち。噂が広まって、音楽で食っていくのも困るってえ話だ。自信が無きゃ止めといた方がいい」
 冗談とも本気とも取れる微妙な調子でそう言った男達に、クラウ・カッツェはあっさりと頷いた。
「ええ。存じています」
「おっ。その顔は辞める気が無いな? へへ、度胸があるなあ、あんた!」
 あまりにあっさり返されたのと、真っすぐな瞳に揺るぎない決心があるのを見てとったのかもしれない。
 男達は豪快に笑い、クラウ・カッツェの背を強かに叩いて、うまそうに酒を煽った。
 その様子を、クラウ・カッツェを除く隊の一行は緊張した面持ちとなり体を固くさせる。
 散々耳にしてきた噂だが、実際祭りが行われる場で言われる言葉の重さは実に重く感じたからだ。
「おっさんたち、相変わらず元気だなぁ」
 突然、彼らの背後から、気だるそうな声が飛んできた。
 一同はその声の主に目を向ける。
 夕刻であるにも関わらず、顔は寝むそうで、ひょろりとした長身を台無しにする具合に背中を丸めて、少しルーズな長さの闇色の髪に寝ぐせを付けたまま、全力でやる気無しですオーラを放つ青年が、へらっと笑って立っていた。
「久しぶりじゃねえか、サヤ! あんまりにも顔を見ねえもんだから、どっかで腹ぁ空かしてぶっ倒れてくたばっちまったのかた思ってたぜ!」
「食うに困ったら真っ先におっさんたちの家に転がり込んで、堂々と飯を食べさせろと要求するって言ってるじゃないか。腹ぁ空かせてくたばるなんて事はねぇって」
 無茶苦茶な事を堂々と宣言するサヤと呼ばれた青年は、断りもせずに知り合いであるのだろう、男達の座る円卓に腰をおろし、断りもせずに並べられた食事を食べ始めた。
 そんな彼の勝手な行動には慣れているのか、男達は誰も彼を咎めたりはしない。
「おい、サヤ。このにいちゃん達が音楽祭に出るんだとよ」
「へぇ」
 眠そうな眼をカッツェ音楽隊一同に向けると、もぐもぐと口を動かしながらちょっと何かを考え込むように宙を彷徨わせたが、口の中の物を飲む込むと、再びにへらと笑い、頬杖をついて言った。
「腕に自信あんの? それなり、ってんじゃあ止めた方がいいと思うけど」
「中途半端な気持ちで来れば地獄を見ると言う事くらい、身を持って知っているよ」
「なんだ。初めてじゃないの?」
「私だけね」
 自嘲気味な笑みを浮かべたクラウ・カッツェを見て再び考え込むように視線を宙でさまよわせたサヤは、幾分意地の悪い雰囲気を漂わせた笑いを浮かべて一行を見据えた。
「今から一曲弾けるかい?」
「ああ。弾けるとも」
「なら弾いてみない? 今ここで。客の反応観て置くのも大事っしょ?」
 思わぬ提案だったが、クラウ・カッツェは徐に頷き、一同に楽器を取りに行くよう促した。
「マスター。一曲演奏してもらう事になったから、あそこの舞台借りるよー」
 サヤはひらひらと手を振って店の主人に告げるだけ告げて返事は待たずに舞台を示した。
「あそこでやって。曲は何でもいいからさ」
 速い展開についていけない周りを放置して、クラウ・カッツェはサヤを見据えた。
「一つ聞いてもいいだろうか?」
「んー?」
「君は一体何者だ?」
「あんたと同業者」
 へらっと笑って答えたそれに、驚いたのはサヤの知り合いであろう男達であった。
「おい。サヤ。お前、楽器演奏出来たのか?」
「楽器持ってる所すらも観た事ねえし」
「もっちろん出来るさ。それで生活してんだもん。って言うか、おっさん達に言ってなかったっけ?」
「聞いてねえ。やけに耳が良いのは知ってたが、まさか演奏出来る奴とは思っちゃいなかった」
 じろっとサヤの容姿を見て、馬鹿にしたような表情で男達は笑う。
「そんなナリで演奏家なんぞと言われても信用出来るかってんだよ」
「ひっでぇ」
 不貞腐れたように唇を尖らせて不平を言うサヤの背中を男達は遠慮なく叩く。
 その遠慮の無さが、彼らの距離が近い事を示しているようで、クラウ・カッツェはその光景を、眩しいものでも観るかのように、目を細め見つめていた――――――。




 第二楽章へ続く>>





2010⁄08⁄29(Sun) 23:40
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
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