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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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オリエント王立交響楽団物語 第三楽章
オリエント王立交響楽団物語 (全4話)


【第三楽章】 銀貨五枚の革命








 フェルラートはオリエント王国の宰相である銀狼公の長男である。
 今年で十八となり成人を迎えた彼は、社交界ではもっぱら有名な青年であった。
 銀狼と言われる由縁となった父親の輝く銀髪と切れ長の目を譲り受けながらも、剣呑さはそこには無く、代りに十八とは思えないほどの無駄に色気溢れる雰囲気を漂わせている美男子だ。
 だが、彼が有名であるのは容姿以上に、彼に備わる数多の非凡な才覚によるところが大きい。
 若いながらも宰相位の父親の仕事を支えるほどの力を持ち合わせるまでになっている彼は、国政に携わる者達にとって無視できない存在なのである。
「それでは行って参ります。父上、母上」
「ああ。気を付けて行ってきなさい」
 厳粛な面持ちの父親と、タンポポのような柔らかく穏やかな微笑みを浮かべた母親に見送られ、フェルラートは屋敷を出た。
 ここ数日、フェルラートは父の仕事の一端である数日後に控えた音楽祭の準備の精を出していた。
 彼が担う仕事は、オリエント王立交響楽団によるセレモニーの準備である。
 大勢の人々が行きかうがゆえに、祭りを滞りなく進めるための準備というのは相当な労力が必要となる。
 多大な権力を持つ父親を持ってはいるが、まだ爵位を持たない彼自身にはさしたる力は無い。
 それにもかかわらず、国事に関わる仕事を担う事が出来るのは、それ相応の理由があった。
 それは、フェルラートが、権力欲にまみれ実力が損なわれていた楽団を立て直した者の一人であるからだった。
「今日もまた、あの癖者ぞろいの連中を相手にしなければならないなんて。非常に気が重い」
 深いため息をつきながらも、馬を進めるフェルラートの姿を見る二人の従者も同じように深いため息をつき、一行は楽団員宿舎へと向かった。


「どうだった? 昨夜は」
 オリエント王立交響楽団は、王城の直ぐ傍に建てられた専用の宿舎で寝泊まりしている。
 音楽に専念出来るようにと建てられた楽団員宿舎は、平民出身者だけでなく、貴族出身者であってもこの宿舎で生活を送る決まりであるため、宿舎内では頻繁に権力と言う名の暴力が振るわれていた。
 それにより、数多くの有能な演奏者達を潰し、あるいは外に流出させており、国内随一という名誉も損なわれつつあった。
 だが、一年前。
 フェルラートと、彼の従兄で楽団の団員であるアルベルト、そして、とあるやる気の無い一人の青年音楽家によって、オリエント王立交響楽団に変化が訪れた。
 その変化の一端が、今の団員達の会話に現れている。
「演奏しようにも、どこもかしこも先客が居て駄目だ。生活するために演奏している者達に横やりを入れるのは、流石に気が引けるし。やはり、音楽祭が終わるまではお預けだ」
「そうか……。出来れば音楽祭の前に一度だけでも街で演奏したかったんだが、その状況じゃあ諦めるしかないか」
「演奏は出来ないが、聴きに回るのだけでも街に行く価値はある。これだけの演奏家が集まるのはこの時期しかないからな」
 宿舎の一階に備わっている食堂には、朝食時であるた多くの団員達が居た。
 皆、身なりが良いため一見してでは判らないが、平民出身者と貴族出身者が入り混じった状態である。
 それは、一年前には考えられない光景であった。
「お早う。フェル。今日も朝早くから御苦労様」
 宿舎に入って早々声をかけて来たのは、従兄のアルベルトである。
 赤い薔薇のような色をしたゆるい巻き毛の髪と落ち着いた物腰のこの従兄は、見た目通りの落ち着いた性格と穏やかな気性であることから、フェルラートほどでは無いにせよ、演奏家として名前が知られるようになる以前から、社交界でも人気のある青年であった。
「お早う。アル。今から食事か?」
「いいや。もう済んでいるよ。今日はサヤと早朝練習をしていたからね」
 穏やかな笑みを浮かべたアルベルトに、フェルラートも自然と笑みが零れる。
「やる気が無いように見えて、サヤは結構努力家なんだよね。まあ、大抵は見た目通りにやる気が無いんだけどさ」
 そう言われて思い浮かべたサヤの姿は、やっぱりやる気の無い姿だったので、フェルラートは眉間に皺を寄せた。
「で。そのやる気の無い馬鹿は今どこに居る?」
「食事を済ませて直ぐに街へ行ったよ。なんでも、昨夜どこぞの酒場で良い演奏家と出会ったらしくてね、彼らに音楽祭の時に演奏できる場所を確保するとか言っていたよ」
「逃げたわけじゃないんだな?」
「まあ。ちょっとはそれも理由に入ってたかもしれないけど、昼には戻るって言っていたから、今日は大丈夫なんじゃないかな」
「……ふん」
 フェルラートは頷き、再び食堂に目を向けた。
「一年で、こうも変わるものなのだな」
 皆小奇麗で簡素な服装をしており、言動についても、一見しては、平民と貴族のどちらの出身者であるか判断が付きにくくなっている。
「君の脅しのお陰だよ。あれは、言いだした僕ですら、ちょっと恐怖だった」
 苦笑いを浮かべて居る従兄に不機嫌な顔を向ける。
「あれは私の一生の恥だ……」
「そうかい? 僕には英雄に見えたけどなあ。無論、素晴らしい君の演奏を除いての意見だけれど」
「……アル」
「ある意味才能だと思うよ? 君の演奏。どんな楽器を持って演奏させても、飛ぶ鳥を落とす演奏が出来るのって」
「よし。わかった。今から弾いてやろう」
「ごめん。僕が全面的に悪かった。だから弾かないで欲しい。今君の演奏を聴いたら、音楽祭にうちの楽団が出れなくなる」
 全力で謝られたフェルラートは少々複雑な表情になる。
 だが、咳払いをひとつして直ぐに気を取り直した。
「まあ、脅しが効いたと言えども、こうして皆の意識が変わったのは私の力では無い」
「そこはほら、やる気の無い実力者であるサヤのせいだろうね。あんなにやる気の無さ全開でも、誰よりも奏者としての腕はいいから」
 それにはフェルラートも渋々頷くしかなかった。
「あいつほど常識にとらわれない奴は初めてだ。だからこそ、楽団がこうも変わったのだろうが……」
 フェルラートは一年前の出来事を思い出す。
 王都から少し離れた小さな村へ行って来た帰り道、検問待ちで長蛇の列が出来る門前付近で、何故か列とは別に人だかりが出来て居るのを見つけた。
 検問に立つ兵にその事を尋ねると、検問待ちで暇だからと気まぐれにヴァイオリンを弾き始めた音楽家が一人、そこに居るのだと言う。
 お陰で検問は非常に安易に進むが、検問が終わってもヴァイオリンの音を聴きたいがゆえに、中々街中に人が入りたがらないのだと言う。
 珍しい不満の声に戸惑ったフェルラートだが、ならば街中にさっさと入れてしまうしかないだろうと判断し、その演奏家の首根っこをひっ捕まえて王都に入れた。
 それが、フェルラートとサヤとの出会いである。
 そして、サヤが王都に入ったその夜の酒場街は、懐が心もとなくなっていたサヤが演奏しに出たお陰で、尋常でない賑わいを見せた。
 その噂を聞きつけたアルベルトが、サヤを楽団に入れたいと言い、またもやサヤの首根っこをひっつかまえて、今度は楽団員宿舎に殴り込みをかけたのだった。
『私の素晴らしい演奏を聴きたくないのならば、今直ぐ街に繰り出して、その自慢の演奏で金を稼いでくるがいい。平民達の一日の稼ぎの平均は銀貨五枚だ。銀貨五枚すら稼げぬ演奏者は、国内随一の楽団である団員として相応しく無い!』
 フェルラートのそこ言葉に率先して乗ったのが、アルベルトである。
 飛ぶ鳥を落とす勢いの、ある意味素晴らしいフェルラートの演奏を聴きたくないと言うのも理由にはなっていたが、当時の貴族出身者としては珍しく、地位や名誉、家柄よりも音楽を優先しているアルベルトは、純粋に、自身の腕前がどれ程のものか知りたかったのだ。
 そうして、フェルラートの素晴らしい演奏を聴かずに出た者、聴いて死人のような顔色で出た者それぞれ居たが、結果として、一日で銀貨五枚を稼げた奏者は片手の数だけであった。
「あの時、僕はなんとか銀貨五枚を稼げたけれど、それでも自分の演奏が人々の心をさして捉えるものでなかったというのは衝撃的だった。何が国内随一だと本気で思ったよ」
「私も、まさかあの一言で、一年後にはこれほどまでに変わるとは思いもしなかった」
「ちょっくら稼いでくるわー、って街に繰り出して金貨五枚稼いできたサヤが居たから、余計にかな。あの時は流石に、開いた口が塞がらなかった」
 やや自嘲気味に笑うアルベルトだが、その当時は顔色を無くすほどの衝撃的な出来事だったと聞く。
 サヤのその行動により、音楽家としての意識が少なからず残っていた者は皆、何日かに一度街に繰り出し演奏をして、自身の腕前を磨くようになった。
 そのお陰で、頻繁に平民と接する事が多くなった貴族出身者達からは平民出身者を頭ごなしに批判する事は無くなり、演奏をして金を稼ぐ事によって評価される事により団員達全員の腕も見違えるように上がり、楽団としても大きく成長を遂げることとなったのである。
「フェルラートの身を呈した奇策と、サヤの桁違いの演奏技術と、僅かにでも残っていた音楽家としての自尊心が今の楽団を作り上げたんだ。嬉しいよ。本当に」
「私としては大いに不本意な所があるが、まあいい。……兎に角、サヤが居ないのでは話を進めようも無い事だし、午前中は街で人気の出ている演奏家達の情報でも集めるとしよう。アルも来るか?」
「もちろん行くよ。当日は忙しくて沢山は聴いて回れないだろうから、街の噂を参考に回る場所を決めようと思っていた所だしね」
 少年のように楽しげな目を細めて笑ったアルベルトと共に、フェルラート達は楽団員宿舎を出る。
 街の賑わいは音楽祭に近づくにつれて増して行く。
 その賑わいを、決して衰えさせる事の無いようにするため、フェルラートは今日も忙しい日々を送るのだった。





 第四楽章へ続く>>





2010⁄09⁄20(Mon) 16:04
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
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