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とある国のクリスマス【後編】
とある国のクリスマス【後編】


※本作品は、本来のクリスマスとは意味合いや設定が異なっております。
ご注意ください。






 それを見たのは偶然だった。
 ハインツは一瞬躊躇ったものの、今見たものを放っておくべきではないと判断して、その影を追うことにした。
「また閣下に迷惑な顔されるだろうなぁ……」
 がっくりと肩を落としたくなるのを抑えて、走りだした。


 両親に連れられて城には何度か訪れた事のあるサンタ、カイ、トナーの三兄弟だが、今日は何時もとは明らかに違う華やかな雰囲気に圧倒され、それからすぐに目を輝かせた。
「すごーい!」
「きれー!」
 赤と緑を基調とした飾り付けは独特ながらも美しく、巨大なもみの木を彩る飾り付けは豪奢ながらも気品があり、見る物の目を飽きさせない。
 煌びやかな衣装を身に纏った人々も、飾りつけが普段とは異なるせいか、幻想的な雰囲気を持っているように見える。
「楽しんでおられますかな? 伯爵殿」
 三人の父親に話しかけてくる者は多い。
 だが、大抵は良く屋敷にも来る顔見知りばかりなので、少年たちも気軽で居られるが、今回話しかけて来た人物は違った。
 病人のような顔色の若い男性で、身を包む衣装も質は良いが地味。
 表情は冷徹で、少年たちに向ける目は冷ややかでいて全てを見透かしているようで恐ろしい。
 思わず両親の後ろに逃げた三人を見ても、やはり男は表情を変えなかったが、見上げた父親の表情は普段よりも好奇の色があり、それが実に奇妙だったが、直ぐにその理由を知る事になった。
「ご苦労様です、宰相閣下。珍しいですね。閣下がこのような場に出られるのは」
 思わぬ言葉に少年たちは驚いた。
 若き宰相が誕生した当初、あまりの若さに反感が強かった時でさえも、両親は若き宰相の事をとても高く評価し、その人柄を好いていたので、とてもすごい人だろうと勝手に思っていたのだが、少年たちの想像とはどうやら異なっていたらしい。
「ちょっとした仕事がありましてね」
「ほう。それはそれは」
 面白そうな表情を浮かべる父親と、冷徹な仮面のような顔を浮かべた若き宰相。
 少年たちから見たら不思議な光景だった。
 その時突然、若き宰相の視線が右前方に移動したと思うと、何やら騒々しい声がホールに響いた。


 ヤンは突然騒々しくなった場所がどこであるかを明確に見つけて、即座に目を向けて剣呑な表情を浮かべた。
 腕にまとわりついていた女は、愛想のよかった彼の突然の変わり様に戸惑い、そっと側を離れて行った。
「……やっぱりか」
 小さく呟き、彼は国王が座る壇上へと急ぎ向かう。
 騒ぎを起こした何かは、きっと直ぐにそこへ向かうと直感が告げているの信じて。
 隙の無い動きで混み合うホールの中を誰とも身体を接触すること無く進み、壇上に上がる直前のテーブルに置いてある使いかけのフォークを一本拝借して。


 ヴォルフは、突然目の前にやってきた男に少し驚いた。
 全くといっていいほど知らない顔である。
 ダークグレーのタキシードは銀の刺繍を凝らした上品な作りで、まるで狼のようなストイックな雰囲気に良く似合っており、立っているだけで人の目を引く男だ。
 これほど目を引く男が、今の今まで壇上に居る自分の目には映らなかったのだから、直人ではないことだけは確かであった。
「お初にお目にかかります。陛下」
 低く響く声から剣呑な気配を感じ取り、ヴォルフは身構えた。
「単刀直入に言います。ちょっと急いでホールを出てください。狙いは恐らく貴方だ」
 何のことだと問う事はしなかった。
 ヴォルフは思わず口元を釣り上げた。
「……面白い」
 即座に席を立ってホールを出る。
「目立たない場所がご所望かね?」
「話が早くて結構なことです」
 男は獰猛な笑みを浮かべたが、それはヴォルフに対して向けた笑みではないことを本能的に感じ取っていた。
「こっちだ」
 ヴォルフと男は早足で廊下を進んだ。



「全く。また厄介ごとを持ってきたようですね。彼は」
 ホールの隅で起きた騒ぎを起こした瞬間を意図せず見たエドゥアルトはため息を付いた。
 そして、即座に壇上の国王に視線を向けると、そこに見知らぬ男が居ることに気づき、小さく舌打ちした。
「様子を観てきますのでこれにて。君たちは伯爵と離れないように」
 警戒されている様子だったが、伯爵の後ろに隠れるように居る少年たちにそう告げておき、エドゥアルトは騒ぎの中心へと向かった。
「失礼。道を開けてください」
 道を開けてもらい騒ぎの中心に居る人物を見下ろす。
 そこにいたのは騒ぎの中心には必ずと行っていいほど居る青年だった。
「すみません、閣下……」
「謝罪は後で結構。とりあえずまずは外に出なさい」
 素直に頷きホールを出るハインツを見送り、席を立つ国王の様子を確認した後、客を落ち着かせてから自身もホールを出た。
 ホールを出て直ぐの控え場で、ハインツはうなだれていた。
「状況を説明してください」
「暗殺者です。あの場に陛下を殺そうとしている物が混ざり込んでいました。だから、それを止めようとして」
「止めようとして失敗したと?」
「はい」
「何故暗殺者を止めようと思ったのかは大体わかるので聞きません。ちなみにですが、その暗殺者というのは男ですか?」
「いいえ。女です。使用人の格好をした、女です」
「なるほど。わかりました。とりあえず貴方は職務に戻りなさい。ホールへの出入りは当然禁止します」
「……はい」
 エドゥアルトは踵を返してホールへとまだ戻る。
「ああもう、面倒くさい」
 ゲホゲホと咳き込みながらも、彼の歩みに迷いは無かった。



 想定外のことが起きて、ギゼラは焦っていた。
 普通なら、あんな目立つ場で自分を取り押さえようとする馬鹿は居ない。
 貴族とは見栄で生きているような者たちだ。
 わざわざ悪目立ちするような事をしないはずと踏んで、それを考慮して動いていたのに、見事にそれを潰された形となった。
「何なんだ。あの男はっ!」
 内心毒つきながらも、国王が席を立ちホールを出ていくのが見え、慌てて自分もホールから抜け出す。
 廊下を抜け人気が減った場所で、国王が一人立っていた。
 明らかに罠であることが伺え、出るに出れない状況となり、戸惑っていた所で恐ろしいほどの殺気がこちらに向かってやってくるのを感じ取り、反射を頼りに半身を引いた。
 すると、何かがそこを通りすぎていき、大理石の壁に中って甲高い音が辺りに響いた。
 見ればそれは、銀色のフォークだった。
「ちょっと間抜けだが腕は腕はよさそうだし、何より美人というのが良いね。惚れそうだ」
 声は思っていた以上に近いところから聞こえて、ギゼラは背筋を冷や汗が伝うのを感じた。
 自分の存在がバレていることは明白だった。
「ふむ。美人に殺される最後も悪くはないが、ちと今は早すぎるなあ」
 呑気過ぎる国王の発言に、思わず舌打ちした。
「国王を黙らせる。それが依頼だ。殺せなくとも、そうなれば問題はない」
「君を雇ったのは誰だね?」
「答える必要性は無い」
「それもそうか」
 獰猛な笑みを浮かべた男は、実に不愉快なほどの余裕を醸しだし、ギゼラを挑発していた。



 サンタとカイとトナーの三兄弟は、若き宰相からの依頼を遂行すべく、ホールの中を賑やかに歩きまわった。
 依頼の内容は十字架という、十字の飾りを持つ者を探すことだった。
 だが、捜し物が何であるかを回りの人間に行ってはいけないという。
 三兄弟は秘密の仕事を任されてウキウキしながらホールを歩きまわった。
 そしてついに、その目的の人物を見つけると。
「いくぞ。ふたりとも」
 サンタが声をかけると、カイとトナーはうなずいて、大ぶりのイチゴが乗ったケーキからイチゴだけを取って走りだした。



「いやぁ、見事見事」
 当事者で有るにもかかわらず傍観者になっていたヴォルフは、捉えられた暗殺者と、それを捉えた男に賞賛の拍手を送っていた。
「どうも緊張感が無いな」
 男は肩をすくめる。
「すまんね。割りと命を狙われるのは慣れているものでな」
「国王となればそうだろうが、それにしても緊張感が無さすぎるというか……」
 呆れた声を響かせた男の言葉が終わるか否かの所に、ヴォルフにとって大変聞き覚えのある声とその主がやって来た。
「ご無事ですね」
「ご無事だとも」
 まるで心配した感が感じられない平然とした若き宰相だが、少し無理をしたのか少し咳き込んだ。
「それが暗殺者ですか?」
 未だに意識を失っている暗殺者をそれと行って指さし、ヴォルフと暗殺者を捉えた男が頷いた。
「主犯は見つかったのかね?」
「ええ。ハインツが関わってくれたおかげて、予想以上に解決が早まりました」
「それは何よりだな」
 二人の会話の内容があまり理解出来なかった男は少し眉を上げて首を傾げるも、気にしないことにしたのか、直ぐに足元に倒れている暗殺者を指さした。
「で。こいつはどうするんだ?」
「ああ。こちらで引き受けましょう。うまくすれば使えそうですしね」
 平然と行ってのけた言葉に一瞬黙りこみ、辺りを見渡してこの場に自分たちしか居ないことを確認した上で、弾きだした答えに問いを投げた。
「……あんたに運べるのか?」
 ひ弱とは言わない体格ながらも明らかに病人といった風体のエドゥアルトが、暗殺者を運べるとは思えなかったのだが、その答えはあっさりと返された。
「まさか。そこの陛下が運びますから気にしないでください」
「「否。ダメだろ、それっ」」
 思わずヴォルフと男はツッコミを入れた。
「そうですか? じゃあすみませんが牢まで運んでいただけますか? 【首狩り】のヤン殿」
 こんな変わった奴は初めてだと思っているような表情で、暗殺者をとらえたヤンはため息をついたのだった。



「結局のところ。問題はネーミングだったわけだ」
「結局のところ。そのようで」
 意識を取り戻した暗殺者ギゼラと、彼女を雇っていた神の子の信者であった貴族の話から出た、国王暗殺の理由はそれであった。
 戦争や内紛の多くは、今回のような些細な事が切っ掛けで起こるのだから、簡単に笑い飛ばす事も出来ないのだから面倒な話である。
「暗殺者はクリスマス自体に反対する者から私を殺すまではしなくとも、黙らせるよう依頼を受けてパーティーに参加していた。だがそこに、クリスマス自体は反対じゃないが、本来の趣旨とは異なると言う意味で今回のパーティーに異論があった貴族が、たまたまギゼラの所属する暗殺者ギルドの印を知っていたがゆえに、彼女に接触して、同じような依頼をされてしまった」
「その様子をたまたまハインツが聴いていて、依頼主の姿はわからなかったが、暗殺者は見えたためそれを追いかけた。追いかけた結果、手を掴んだ所で思わず派手に転んでしまったのでちょっとした騒動になったんですが」
「何時もながら、間の悪い奴だ。ハインツは」
「まったくです」
「だが、貴族の方はよく見つけたな」
「宗教は時に盲目、それゆえに暴力的な行動に出てくる事もあります。以前から気にはしていたので、今回何か仕掛けてくる可能性のある者を入城時にチェックしておきましたので」
「用意周到な事だな」
 エドゥアルトは肩をすくめただけで、何も言わなかった。
「それにしても先ほどから気になっていたのだがな」
「なんです?」
「何故昨日俺を殺そうとしていた暗殺者がお前の後ろに平然と立ってるんだ?」
「ああ。私の護衛にしました」
「はっ?」
「いい加減毒盛られて病人やっているのは飽きたので、そろそろ反抗する連中を徹底的につぶしにかかろうかと思いまして」
 ヴォルフは流石に言葉を無くすほどに驚いたのだった。




「サンタ、カイ、トナー。お前たちに陛下からプレゼントだそうだ」
 翌朝、三兄弟は思わぬ人からの思わぬプレゼントに驚き半分、期待半分で、広間にあると言うプレゼントを早く見たいと、嬉しそうに駆けて行った。



【 終 】


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2011⁄12⁄25(Sun) 21:58
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
comment(4) trackback(0)
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【 コメント 】



若き宰相さまが素敵すぎ・・・!!!
陛下も大人の余裕があって渋くて・・・!
yumiちゃんのお話はいつもキャラが立ってて良いですなー。

忙しいのに素敵な作品ありがとう♪

2011/12/26 00:22 URL | 彩世 [ 編集]

>彩世ちゃん

楽しんでもらえてよかったよー(´ー`)
またこうして少しずつイベントが出来るといいねw
2011/12/30 22:19 URL | yumi@管理人 [ 編集]

ほ、本格的…!
忙しい中でこれだけのボリュームの作品を作り上げるバイタリティに頭が下がります。
宰相のキャラがいいですねー。
三兄弟がサンタとトナカイなのもいいですねー。
圧巻でした。
2011/12/31 00:08 URL | Mr.Noddy [ 編集]

>Mr.Noddy さん

大変遅いコメント返しですみません。
読んでいただきありがとうございます。

もう、設定考えて書き始めたのはいいんですけど、正直短編で収まりきる様な状態に持って行くのが大変でしたが、なんとか楽しんで頂けるレベルには持っていけたかなと思い、ちょっと安心しています。

いつも読んでいただき、ありがとうございます^^
2012/02/08 18:33 URL | yumi@管理人 [ 編集]
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備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

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