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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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闇はただ貴女だけを愛す - 第一章 愚者と闇
闇はただ貴女だけを愛す



第一章 愚者と闇






 風が運んできたのは、鼻を布で覆っていても分かるほどの凄まじい死臭。
 死臭の元になっているのは当然の如く、死体だ。
 だがそれは、動物達の死体ではなく、人間の死体だった。
 それも、おびただしいほどの数である。
 大量の血が大地を赤黒く染め、大量の屍が大地を埋め尽くしているという表現がまさに当てはまる。
 まるでつい今しがた戦場が通り過ぎていってしまったかのような光景が、何の変哲も無い平凡だったはずの村に広がっていた。
 
 その村に足を踏み入れた彼は、その異様な光景を目の前にしても、怯む事も、迷う事も無く、まるで決められた線の上をなぞるようにして、転がる人間の死体を踏み、大地を染め上げた血で服が汚れる事も気にせずに、小さな村の中心になる井戸の横に座り込んでいる唯一の生きた人間の元へと向かい、その人物の目の前で立ち止まった。
 座り込んでいる人物は、彼の足音に反応を示し顔を上げる。
 露になったその人物に表情は無かった。
 頭から赤い水でも被ったかように全身を赤黒い血で染め上げているため、顔も赤黒い血がこびり付き、その顔から覗く闇色の瞳はまるで鏡のように、ただ彼の姿を映しているだけ。
 そんな異様な姿をしたその人物を見て、彼は驚き目を見開いた。
 そして、徐にその人物の前に膝をつき、外傷はないかと体に触れて確かめる。
 全身を染め上げている血が黒くなり始めていたため見た目でははっきりとはわからなかったが、触れた肌には浅い斬り傷しかなく、致命傷になるような傷は無かった。
 それがわかると彼は短く安堵の息を漏らし、そっとその人物の血で染まった頬に、透き通るように白い己の手を添えた。
 その人物はその行為に反応を一切見せなかったが、それでも彼にとってはなんら問題はなかった。
 血で汚れてしまう事も厭わずに、優しくその人物を抱き寄せ、その人物の心を深く傷つけた何かから護るように、そして、愛おしい人を拘束するかのように、強く、優しく抱きしめた。
 彼に抱きしめられても強張ったままの体。
 時折何かを否定するように揺れる頭。
 静かな呼吸音に混じって聞こえる小さな嗚咽と歯軋り。
 それだけで、彼には手に取るように、その人物の味わった恐怖を感じ取る事が出来た。
 そして、無数の刃物で切り裂かれたボロボロの服の下から覗いた無数の打撲の痕が。
 手首には鬱血してくっきりと残った人の手形が。
 井戸に立てかけている血と油がこびり付いている刃こぼれした剣が。
 彼の心を怒りの色に染めはじめる。
 それら全ては彼女が生き残った証であるが、それら全てが彼女に深い傷を負わせた証だからだ。
 けれど彼は怒りの色に染まりはじめた心を沈め、少し強くその人物を抱き、まるで詩でも歌うような美しい声で呟いた。
「やっと、会えた」
 その声で、その人物の鏡のような瞳に意思が戻りはじめる。
「お前の居ない世界は、実に退屈だった」
 彼はゆっくりと体を離し、意思が戻り始めたその人物を抱えて持ち上げた。
 その反動で、被っていた黒いフードの中から彼の真っ白な髪がこぼれ出る。
 それを見た瞬間、その人物は目を大きく見開いて、フードの下に隠れた彼の顔を真っ直ぐ見つめる。
 そして、その人物は完全に意思の戻った闇色の瞳を涙で覆った。
「ああ・・・・・・」
 漏れでた擦れた声が静かな街に小さく落ちた直後、二人の姿が忽然と消えた。
 
 
 
 
 
 二人が消えて生きた者が居なくなった村は、月が夜空高くに上った頃に、何一つ残す事無く消え去った。



 
◇ ◇ ◇

 
 
 
 各家々の煙突から煙が立ち上り始めたほどの早朝に、窓をすり抜け入ってきた、まるで炎の化身のような美しい鳥を見て、クラウスは盛大に顔をしかめた。
「魔鳥とは穏やかじゃない」
 魔鳥(マチョウ)とは、魔術で作られた鳥の事で、用途としては伝書鳩や鷹文などと同じ、魔術師版の連絡手段の一つだ。
 短い距離を飛ぶ場合は小さく、長い距離を飛ぶ場合は大きな鳥の形を成し、雪のように白い色が一般的だが、時にその鳥は色を変え、送り主にすぐに意味を伝える。今回の場合は、「緊急」又は「悪い知らせ」を意味する色をした大きな魔鳥だった。
 魔鳥は、差し出されたクラウスの腕にとまると、口を動かし上級魔術言語で彼に知らせを三度繰り返して伝えると、その姿らしく、炎が燃えるようにしてその姿を消した。
「嫌な予感が当たるのは実に不愉快だ」
 クラウスは苛立った顔を直す事無く自分の部屋を出て、そろそろ朝食が並べられているであろう、一階の広間へと向かった。
 一階に下りた時、恐らく剣の稽古をしていたであろう格好をしたダニエルが屋敷に入ってきた。
「さっき、見たことも無い色をした鳥が君の部屋に入っていったから、何かあったのかと思っていたけど、その顔じゃあ、どうも良い事じゃなさそうだねえ」
 軽く頷くと、整ったダニエルの顔が少し顰められる。
「食事が終わってから話そう」
 そう、一言告げて、クラウスは広間へ、ダニエルは着替えに向かい、その後食事を終えた広間で、魔鳥が知らせた話をダニエルに伝えた。
「村が一つ、跡形も無く消えた?」
 話を聞き終えたダニエルが一番初めに言った言葉はそれだった。
「まるでそこに村があったことが夢であるかのように、住んでいた村人ごと、跡形も無く消えたらしい」
「一応聞くけど、元々無かった、とかいう落ちではないよね?」
「たまたま隣町に出ていた村の住人が村が、あったであろう場所に来たら、何も無かったのだと言ったらしい。隣町の人間はそこに村がある事を知っているから、嘘にしては少々無茶苦茶な話という事になるだろうな」
「なるほど」
 ダニエルの顔が盛大にしかめられる。
 長い足を組んで、その組んだ足の膝の上で頬杖をつく。
「その魔鳥の送り主は?」
「魔術師協会だ」
「それじゃあ無視を決め込むってわけにもいかないか」
 甘い蜜色の髪を左手の指でいじりながら、大きなため息をつく。
「遠い場所なら行かずに済んだだろうに、馬を走らせればそう遠くない場所とは、運が無い」
 クラウスは頷く事も、否定する事もしなかったが、その代わり、声に不愉快さが顕著に出た。
「今日中に準備を済ませて向かうつもりだ」
 実に不愉快だ、とはっきり言葉にされるよりも、その不愉快さが伝わる声色だった。
 話し相手がダニエルでなければ、自分は悪く無いのに何故か謝ってしまっていたかもしれない。
「僕に話したってことは、僕も行く必要があるんだろう? 必要なものは?」
「特別に必要なものは俺がそろえる。お前はいつも通りで構わない」
「了解」
 ダニエルは答えると同時に椅子から立ち上がり、直ぐに広間を後にした。
 残ったクラウスもまた、椅子から立ち上がると、話を聞いていたであろう年老いた執事に顔を向けた。
「暫く留守を頼む」
「畏まりました」
 やわらかい微笑を浮かべた老執事は綺麗にお辞儀をし、広間を出てゆく主の姿を見送った。

 
 広間を出たクラウスは鋭い目を一層鋭くさせて一瞬立ち止まった。
「何か。重要な何かを忘れている気がする・・・・・・」
 ふと頭に浮かんだその疑問を口に出しても、疑問の答えは浮かんでこない。
 クラウスはその疑問を忘れないように、右手の中指にはめた銀色の指輪に口付けをして呪いをかけ、再び歩きだした。
 
 



 
 - つづく -





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2008⁄09⁄28(Sun) 19:01
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
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備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

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