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闇はただ貴女だけを愛す - 序章 詩と愚者
闇はただ貴女だけを愛す



序章 詩と愚者




 初夏を迎えるこの季節に、吟遊詩人たちが必ず歌う詩がある。
 それは、『歓喜の詩』と呼ばれる新世界の始まりを示した詩。
 詩は、『闇の王』『死の大地』『希望の光』『去り行く混沌』『新世界』の五章からなる、旧世界の終わりと、新世界の誕生を示す、伝説を語る名もない詩の最終章に当たる『新世界』が元であるとされている。
 最も、この詩の原書自体は魔術言語の中でも最上級の言語(現在伝わっている魔術の創設者のみが使えた言語)で書かれているため、本当に元の文章であるかは定かではない。
 一説では、なんとか解読できた言葉を、上手くつなぎ合わせて作った詩ではないかといわれているが、それすらも定かではない。
 ただ、実際にある程度魔術言語を理解出来る者からしてみれば、その一説はあながち間違っていないと頷けるのも事実であった。
 その魔術言語を理解出来る者に名を連ねる存在である一人の青年が、今まさに詩について考えていた。
「新世界の始まりの詩・・・・・・か」
 そよぐ初夏の風の音ほどの小さな声を聴いた人が居たならば、それを生涯忘れる事が出来なかっただろう。
 艶のある滑らかな声色は低音で、淡白な言葉ですらも、まるで恋の詩であるかのように聴こえてしまう、極めて美しい声だった。
「何度聴いても解らない・・・・・・」
 本人は特に意図していないが、落胆して声が沈むと、まるで恋焦がれた人が死んでしまい、それを嘆くかのような胸を締め付けるような悲しい響きとなる。
 聴く者が居たならば、この声に、意味も無く心を痛めたかもしれない。
 声の主は薔薇の咲く美しい庭を望む事の出来る窓辺に腰かけて、目元が少し隠れるほどに延びた前髪の隙間より、金の混じった深い紫色の瞳を覗かせ、夜空に浮かぶ月を見上げた。
 その動作で、魔術師である事を示す蝶の形を模した飾りの付く銀色のネックレスが、月明かりに照らされほのかに輝きを放つ。
 もう2・3日もすれば満月になるであろう銀色に輝く月は、いつものように、ただ優しく夜空を照らしていた。
 新世界が始まって三百年の刻が過ぎた今、百年近い間、闇のように黒い雲に覆われ見えなかったというのが嘘のような光景だ。
 しばらく月を眺めて考えにふけっていると、背後にある部屋の入り口の方から声がした。
「また、何か考え事かい? クラウス」
 声の方向へ顔を向けると、ほんの少しの合間だけ、雲に隠れていた月が顔をだし、窓から柔らかな光が再び彼の部屋を照らし出す。
 それにより、彼に声をかけた人物の姿もはっきりと姿が見てとれるようになる。
「お帰り、ダニエル。生きていて何より」
 優しい声で来訪者を労う。
 声に免疫のある数少ない人物の一人で、この家の同居人であり友人でもあるダニエルは、まさに今しがた帰ってきたばかりのようで、身に付けているブーツや服には、跳ねた泥が付いていた。
「今回は本当に酷い目にあったよ。後で報酬吊り上げなきゃ割に合わないや」
 貴族と言っても疑われないであろう、優れた容姿と優雅な立ち振る舞いをする彼だが、クラウスに声をかけるまで、物音一つ立てずにここまでやって来たことから解るに、ただの優男では無い。
 依頼を受けて戦場に身を投じ、人を殺して金を受け取る浅ましい職業で知られる傭兵だ。
 ダニエルは肩に掛かった甘い蜜色の長い髪を後ろに払い退けて、近場の椅子に長い足を無造作に投げ出すような格好で座った。
「三下とはいえ魔術師二人を蹴散らして金貨四枚なんて安すぎるよ」
「怪我は?」
「かすり傷一つ無いよ」
 魔術師は、位が最下級の者でも、魔術を使えない者からしてみれば、避けられない凶悪な力でもあり、脅威であった。
 魔術が増えてきた今日では、魔術を悪用する魔術師の数が増え、悪用された魔術によって小さな村や町が壊滅するなどの問題が増え、魔術師自体を恐がる者も増えてきている。
 つまり、それほどまでに魔術およびそれを扱う魔術師が危険であるとされているのだ。
 魔術師相手と知らずに、二人の魔術師を相手にしなければならない状況が、いかに危険であるかそれでわかるだろう。
 最も、そんな不利な状態でありながらも無傷で帰ってきた彼も、ある意味異常ではあるのだが。
「捕らえられなかったのが残念だ。余裕が無かったのは事実だけど、一人くらい生かしておくべきだった」
 ダニエルは左眉を軽く持ち上げ肩をすくめると、再び大きなため息を付いた。
 魔術を悪用した魔術師を捕らえれば、魔術師協会から金を受け取れるのだが、殺してしまっては証拠が無いので金は受け取れない。
 残念がる友人を一瞥して、クラウスは俯いた。
「最近、不可思議な事件が増えていると魔術師協会から連絡があった」
「魔術師に限らず無法者自体が増えてきているよ」
「あまり、よくない傾向だ」
「まあね。おかげで大口以外で仕事にあぶれる事はなくなったけれど、何時どこで何と出会うかわからないのはいただけない」
 まだ少し暖かさの残る風が部屋に吹き込む。
 窓辺に座るクラウスの髪を揺らし、ダニエルの長い髪をそよがせた。
「何か、あるかもしれないな」
「何かって?」
「わからない」
 クラウスは、ゆっくりと前髪をかき上げ、幻想的なその瞳を、夜空へと向けた。
 彼がこの地へ生まれ落ちてからずっと、変わらぬ美しい夜空。
 気まぐれに見え隠れする月。
 時折輝きを変える星達。
「人は絶対的なまでに、愚かだ。その愚かさが、何かを生まなければいいが――――」
 夜が開け、また暮れた時に、この夜空を再び見えることを、彼はこの時初めて願った。
 




 この時既に、闇が蠢きだしている事に気づいたのは、彼ただ一人だった。





- 第一章へ続く -





2008⁄07⁄01(Tue) 19:27

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