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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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吐息に触れて煌く雪のごとく
愛情シリーズ


第四話 吐息に触れて煌く雪のごとく







「貴女がいけないんです」
 白いソファーで、猫のように優雅に眠る貴女を。
 何としても手に入れたくて。
 貴女を感じたくて。
 手をのばして。
 黒い髪に触れて。
 肌に触れて。
「貴女が……いけないんだ」
 言い訳はするけど、弁解はしない。

 だって、貴女が悪いんだから。

 俺の心をわしずかんだまま。
 掴んだ手を放さないままに。
 俺を拘束し続けた貴女が。




「貴女と出会わなければよかった」




 だからもう、終りにしよう。
 この変わらない刻を。




 己の手を貴女の細い首にあてて。




「これで、終りだ……」





 すべてをこれで、終わらせよう。








 ◇ ◇ ◇








「勝負をしよう」
 唐突に言ったその言葉と同時に、見返した貴女の顔には、今まで一度だって見たことのない、妖艶な女の笑みが浮かんでいた。
 その笑みに引き込まれてしまった事で、逃げ道を塞がれてしまったのを悟った時には、もう遅かった。
「やるの? やらないの?」
 カマをかけられているのはわかった。
 煽られていることも理解できていた。
 けれど、それを拒否する事が出来なかった。
 圧倒されていたという事もあるが、正直、愕然とした。
 今までの貴女はなんだったのだろうか。
 たった少しだけ年上なだけと思っていた。
 それなのに、その笑みを浮かべる貴女が、あまりにも遠いい存在に感じた。
 今までの貴女は偽りの姿をしていたのだろうかと感じてしまうほどに。
 それでも、答えなければならなかった。
 答えない事ができなかった。
「やります」
 その時俺が唯一できた抵抗は、無理やりに作った笑みを浮かべることだけ。
「負けないよ」
 貴女が扉を閉めて去って行くのを、ただ茫然と見送ることしか出来ない自分は、なんて子供で、なんて無力なのだろうか。
 そう思った瞬間、急に全身の力が入らなくなって、崩れるようにして座り込んでしまった。
 勝負が始まる前から勝敗がついている。
 勝負が始まってすぐに、自分が負けると確信できてしまった。
 今回ばかりは、回転の早すぎる自分の頭に腹が立た。
 それほどに、先ほど初めて見せた貴女の笑みが、俺の本能を刺激して、敗北を決定付けた。
 そしてその敗北感は、今までに初めて味わったことの無い恐怖を生み、自分の存在自体が怖いと感じさせる。
「……やばい」
 そう、声に出して脳に認識させようとしなければならないほどに、心と制御ができなくなってきた自分の存在が恐ろしかった。
 自分の中に眠っていた獣が、ゆっくりと瞼を開けて唸りだす。
 必死に体を抱いて抑え込んでも、もう時間の問題。
 保持できなくなってきた理性。
 ブレーキのほとんど利かない感情。
 楔が外れて自由に動き出す欲望。
 まだ残った理性が必死に抵抗して、自分の喉から本当の獣のような唸り声が漏れ出る。


 ああ、もう、どうしようも出来ない。


 そう思って、理性を手放そうとしようとした寸前で、ジーンズのポケットに入れていた携帯電話が鳴った。
「……ナイスタイミングだ、俺の友」
 勝手に設定された馬鹿馬鹿しいメロディーが、まさか俺の理性を繋ぎ止めたなんて、それこそ本当に馬鹿馬鹿しかったが、救われたのは事実だった。
 大きく深呼吸を一度して電話に出る。
「また何か事件かい? 俺の友」
 電話越しに聞こえてくる明るい友の声を聴きながら、この勝負の終わり方を考えはじめた。








 勝負が始まってからふた月が過ぎた。
 降る筈もない季節から、朝目覚めてから初めてする行動と言えば、締め切ったカーテンを開けて外の景色を確かめること。
 もういつ終わりを告げる銀色の粒が落ちてきてもおかしくない季節になってからは、ろくに眠ることすらできなくなっていた。
 いつ終わるともしれない勝負に恐れ、勝負が始まった直後に起きた自分の変化に臆病になり、前に進むことを躊躇って、そうしていたらふた月が経った。
 早すぎる刻の流れに怒りさえ覚える。
 だが結局、行動を起こさなかった自分自身に、それらが跳ね返ってきているだけなのだから、どうしようもない。
 わかっているのに動けない。
 それが、これほどまでに不愉快だと思いもしなかった。
 変わらないとわかっていても、貴女に告白し続けた自分はどこへ行ってしまったのだろう。
 好きだから一緒に居たい。
 好きだから触れたい。
 そう思って、それらを直ぐに行動に起こしていた嘗ての自分を振り返り考える。
 だが、眉根を寄せて考えても、その答えはまるで見つからない。
 結局、何も知らなかったから出来た事だったのではと思えてしまう。
 そんなことは無いはずだと思う半面、恐らくそうだろうと確信もまたあることが、理不尽な怒りを何度も何度も呼び起こす。
 まったく本当に馬鹿馬鹿しい。
 貴女と勝負をしているはずなのに、今、実際に闘っているのは自分自身。
 まるで勝負になっていない。
 その事に笑おうとして、顔が引きつり失敗した。
 何が勝負だ。
 こんなの、全然勝負じゃない。まったく勝負になんてなっていない。
 あたかも自分の心を映し出したかのような分厚い灰色の雲が広がる空を見つめて溜息をつくと、吐いた息の白さに心臓が跳ね上がる。
「――――――お願いだ。もう少しだけ」


 時間をくれないか。



 最後の言葉だけが、声に出すことが出来なかった。









 学校から帰宅すると、玄関に見慣れた黒いヒールがあることに気づき、驚いた。
 そういえば、あれからふた月ずっと、会ってもいなければ、一度も連絡を取り合っていない。
 少し前まで、ほんの数日会えないだけで心が壊れるかと思うほどに辛かったのに、今はそうじゃない。
 貴女と会うことで、何かが壊れてしまいそうだから、貴女に会いたくなんてない。
 会いたいけれど会いたくない。
 矛盾しているけれど、それが今の心境。
 まるで駄々っ子だ。
 だから余計に困った。
 勝負の終わりが来たのだろうか?
 貴女から終りにするのだろうか?
 心臓の音が耳障りに思えるほどに高鳴る。
 勝負事で貴女は容赦なんてしないのはわかっているけれど、期待はしてしまう。
 そして、同じくらいに不安も膨らむ。
 縫い付けられたかのようにその場から動かせない脚をなんとか動かし、部屋の奥にたどり着くと、やはりそこに貴女が居た。
 白いソファーに、猫のように優雅に眠る貴女は、ふた月前とは少し違う。
 いや、少し違うように観えたと言ったほうが正しいのかもしれない。
 寝返りを打ったせいで少し刷り上がったスカートから覗く脚が。
 寝苦しかったのだろうか、上着を放り出して、ブラウスのボタンを少し多めに明けた胸元が。
 結んで居たのをほどいたせいで、少し波打った髪の毛が。
 すべてが俺の欲望を盛大に刺激したから。
「貴女がいけないんですよ」
 自分でも驚くほどかすれた声で、貴女に言葉を投げかけ傍に寄る。
「貴女が……いけないんだ」
 膝をつき、少しだけ伸びた貴女の髪に触れ、頬に少しだけ触れてそのぬくもりを感じ取る。
 それだけで、今にも理性が吹き飛びそうになる。
 これはそう、あの時と同じ。
 けれど多分、あの時とは違う。
 もう止められない。
 どうしたって止まらない。
 勝負にははじめから負けていたんだ。
 敗北することがわかっていたんだ。
 それは解りきっていることだた。
 だからこそ、どうすればいいのかを考えていた。
 
 
 
 そう、俺は、その答えをずっと探していた。
 
 
 
 それが今、貴女と再び出会って答えが出た。
 簡単だ。
 至極簡単。
 笑えるほど簡単だった。
 だからもう、悩まない。
 悩む必要はない。
 答えが出たなら動けばいい。
 前に進めばいい。
 そうだ。
 簡単なことだろう?





 己の手を貴女の細い首にあてて。




「これで、終りだ……」




 その首筋に噛みつくようにキスをした。
 加減の利かない欲望を、先に少しでも抑えるために。
 強く、強く、赤く染まるほどに。




「俺の負けです。だから、いいでしょう?」




 貴女の唇を、貪る様に奪っても――――――――。






- 吐息に触れて煌く雪のごとく - Fin





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2008⁄10⁄13(Mon) 00:25
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
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備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

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