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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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蒼い天空に恋した鳥のごとく
愛情シリーズ


第五話 蒼い天空に恋した鳥のごとく







「あれ? 先輩。そのネックレス新しいですね?」
 そう言われたのは、仕事始めということで、新調したカレンダーや小物類を自分のデスクに置いていた時の事だった。
「んー? ああ、これね。そうそう。新しいやつー」
 鞄から紅茶の入った水筒を取り出してデスクに置いて席に付き、後輩の方に顔を向けた。
「リングですね。でもなんだか、ネックレスとしてのリングにしては、凄くシンプル過ぎませんか?」
「やっぱそう思う?」
「ええ、まあ」
 宝石や装飾が一つも無い、シンプルなシルバーのリングを掴んで見た。
 確かに地味だけど、純銀なので色はとても綺麗だから、そう目立たないと思ったけれど、どうもそうではないらしい。
「指だとパソコンいじる時面倒だなーと思って指輪にチェーンつけたんだけど……。やっぱ素直に指にしとくかなあ」
 指を離すとリングが自分の鎖骨の下あたりで軽く二度はね、もとの位置に収まった。
 電源を入れたばかりのパソコンに目線を向けた直後、座っていた椅子の背をガシリと誰かがつかんだような音がしたと思うと、座った私ごと椅子が後ろに引っ張られ、ガツンと真後ろのデスクに椅子の背がぶつかって静止した。
「どこに付けるの」
「は?」
 真後ろの席に座っていたはずの同僚の声が横からする。
 ということは、椅子を引っ張った犯人は彼女であるのは間違えない。
 だが、何故か物凄く真剣な顔でそんな事を言うものだから、何するのとか、驚いたとか、そんな事が言えなかった。
「どこに付けるのかって聞いてるのっ」
「何が?」
「その指輪よ!」
 指を差されてやっとわかった。
「ああ、これね。指輪なんだから付けるのは指だよ?」
「そうじゃない。どの指に付けるのかって聞いてるのっ!!」
「左手薬指?」
 私の言葉に、一瞬周りが静まりかえる。
 そこで今更ながら気づいた。
 言わなきゃ良かったってことに。
 独身男女の多彩な叫び声が朝のオフィスに一時響き渡った。






 彼がお腹を抱えて体をくの字に曲げ、苦しそうに笑っている。
「仕方ないじゃん、浮かれてて気づかなかったんだから。ああもう、笑いすぎだってば!」
 背中を軽く叩いて抗議するが、彼の笑いは一向に収まらない。
 私はその姿をじっと睨んだ。
「……いやぁ……貴女でもそんな、…………事が、あるんですね?……あははっ!!」
 だめだ。お腹痛い。苦しい。と言いながら、まだ笑い続けている。
 もう本当に笑いすぎだ。
「君は指輪してて、何か変わった事は無かったわけ?」
 私の首に下がっているネックレスのリングと同じデザインのものを、彼は左手の薬指にしっかり嵌めている。
 彼もネックレス用のチェーンはあるのだが、どうしてもという時以外には指から外したくないのだと、一緒に指輪を買いに行った時に主張していた。
 男性の方が普通は指輪は面倒だと言ってはずすしそうなものだが、彼の場合は違うようだ。
「ええありますよ? 告白を断るのが物凄く楽になりました」
 彼は、やっと笑いを抑え込み、笑いすぎて涙目になった目を少しこすり、凄くうれしそうな表情でそう答えた。
 なんだこの無駄なキラキラは。とツッコミを入れたくなるほど弾けた笑顔だ。
「貴女以外にモテてもまるで嬉しくないので、物凄く助かってます」
「流石。モテる男な言う事が違うねー」
「好きでモテてるわけじゃないです」
 湯気が立ち上らなくなるほどに冷めてしまった残りの紅茶を飲みほして、新しく入れなおそうと席を立とうとしたところを腕を掴まれて引き戻され、代わりに彼が立ち上がり、手早く紅茶を入れなおす。
 しばらく待って出来上がった紅茶が、カップに注がれ、それを一口飲んでほっと息を吐く。
「おいし」
 彼は優しく微笑んだ。
「貴女も十分モテてますよ?」
「それはないなー」
「言っておきますけど、結構大変なんですよ? 蹴落とすの」
 首をかしげて彼の顔を見ると、まるで悪戯っ子が悪戯に成功したような意地の悪い笑みが浮かんでいた。
 本気なのか、冗談なのか、まるで判断がつかない。
 年下だからとか、そういう理由ではなく、なんとなく遣り込められた感じがちょっと不服で、あえて深く尋ねない事にした。
「……指輪。やっぱり指に嵌めてた方がいい?」
「勿論。けど、邪魔になるんでしょう?」
「邪魔というより、慣れて無いって言うのが正しいかな」
 テーブルに両肘をついて、飲みかけのティーカップを両手で持つ。
 ダージリンの癖のない香が、立ち上る湯気と共に程良く香った。
「なら、出来るだけ指に嵌めてて欲しいなあ」
 ティーポットを置き、私の背に立ちネックレスの留め具をはずす。
 かすかな金属音が鳴り、首元が少し寂しくなる。
 もう一口紅茶を飲みカップを置くと、彼の腕が私顔の横を通り過ぎる。
 耳には彼の吐息が優しくかかった。
「男避け」
 鼓動が弾むような魅力的な低い声でそう告げると、彼の大きな左手が私の左手を持ち上げて、彼の右手が私の左手薬指に銀色の指輪を嵌めこんだ。
 そして、私の指に己の指を絡ませる。
「片っぱしから、これを見せて撃退してくださいね?」
 指輪をはめた私の指にキスをして、絡んだ指が解かれた。
 避けたり撃退したりしなければならないほど、私がモテるわけがないけれど、気持の問題では、指に嵌めているのといないのではかなり違うだろう事はわかる。
 嵌めていてほしいというのであれば、嵌めていた方がずっと彼としては嬉しいに違いない。
「はいはい」
 空いている右手で軽く彼のおでこを叩く。すると、近すぎる気配が少し離れた。
「さてと。そろそろ出ようか」
「ちょっと早くないですか?」
 隣に座りなおした彼が、左手で頬杖をつき、不思議そうな顔をこちらに向けた。
「着物着るのは時間がかかるんだよ」
「着るんですか?」
「君もね」
「着る予定、全然なかったんですけど……」
「うん。何も話してないからね」
「なんていうか……凄く手回し良いですね?」
「だって君の着物姿見たかったんだもん」
「……着ます」
 ただでさえ着る機会の少ないのが着物だ。初詣という絶好のチャンスを利用しない手は無い。
 こんなにハンサムな彼が着物を着れば、どれだけハンサム度合が高くなる事か。
 乙女心。今更ひた隠しになんてしませんっ。
「今度は前もって言ってください。着物くらいなら何時でも着ますから」
 彼はいったん天を仰ぎ、弱ったような笑みを向けた。
 私もその笑みにつられ笑った。
「そうする」


 彼が私のものになり、私が彼のものになって、初めて一緒に外出する今日。
 ほんの数日前の苦しい日々が嘘のように、今見上げた空と同じように、心は、気持ちは、清々しく晴れ渡っていた。
 指をからめて手をつなぎ、子供のようにつないだ手を前後に揺らして一緒に歩く。
 彼との勝負はあっという間に、ロマンチックな事など全然ないまま、あっさりと終わってしまったれど、彼が私を追いかけてくるわけでもなく、私が彼を待つわけでもなく、肩を並べて一緒に歩けるようになったという事が、私にとって何よりも嬉しい事だった。
「あ。そうか。今年はここ数年お願いし続けてた事をしなくてよくなったんですね」
 ふと立ち止まって彼は言う。
「それはそれは、おめでとう。しっかり神様に感謝しなきゃだね」
 そんな彼を見上げて私はニッと笑う。
「お願い事とはちょっと違いましたけどねー」
「結果オーライ」
「ですね」
 互いに見つめて笑いあう。
 ひんやりした真冬の風も、私たちの間を通ったほんのひと時の間だけ温度を上げて、去ってゆく。
「今度は、この縁が切れないようにお願いするとします」
「じゃあ私は、この縁がもし万が一切れたとしても、結びなおせるようにお願いしとく」
 顔を合わせた彼と私の白い吐息が空中で混ざり合い、少しだけ長い余韻を残して姿を消した時、数瞬の、けれど、永遠とも思えるほどに長く、甘く優し温もりと、口に出さずとも伝わる互いを思う気持を感じ取り、もう一度二人で笑い合った。




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2009⁄01⁄07(Wed) 20:48
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
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性別 : 女
職業 : SE
備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

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