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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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雛祭り yumiの場合
 十六回歳を重ねた女の子には、付けられた名と同じ花のついた簪を―――。


 そんなしきたりが我が家にはある。
 これは、母の祖母の祖母にあたる人が、十六になったその年に婚儀を挙げることとなり、それを祝って両親が、娘と同じ名の花を簪と共に贈ったことが始まりなんだそうな。
 そして、婚儀を挙げた日が雛祭りの日であったことから、今では十六歳になった女の子が迎える雛祭りの日に、自分の名に付けられた花の簪が贈られるようになったわけである。
 着物を普段着として着なくなった今日では、十六歳の誕生日を祝って花簪を贈る、というしきたりだけが残っているだけなのだけど、身につけることがほとんどなくとも、綺麗な簪をもらえるというだけで、女の子としては嬉しいものだと私は思う。



 時を遡り三年前の事。
 私が十六歳となった年の雛祭りの日に、母が杏の花の簪を私にくれた。
 私はとても嬉しくて、何度も何度もお礼を言ったのだけれど、母が柔らかく微笑んで、
「お礼なら吏桜にね」
 と言った。
「―――吏桜?」
 突如出てきた名前に驚いて、隣に座る本人を見た。
 すると、なんだか居心地悪そうに、少し不機嫌そうな顔でそっぽを向かれてしまった。
「それ、作りに行く時にね、吏桜が突然一緒に行くと言ったから一緒に行ったの。そしたらお店に入った時に言ったの。『姉さんの簪は僕が作るから』って」
「母さん」
 人づきあいが苦手だからと、人との距離を取るために、悪くないのに眼鏡をかけているせいか、相手に威圧感を与えてしまう風貌のこの弟は、本当は物凄くシャイで照れ屋なのは家族の中ではわかりきった事実だから、母も私も吏桜の反応に、ついつい笑みがこぼれてしまうのだ。
「滅多なことでは文句も意見も言わないわりに、杏の事になると吏桜は全然態度が違うのよね」
「そうなんだ?」
 脇を肘でつついて尋ねると、さらに不機嫌な顔をして、「うるさい」と言って部屋を出て行ってしまった。
「吏桜はほんと、お姉ちゃんっこなのよねー」
 きらきらと輝く綺麗な花簪にこもった家族の愛情を、私はその時はっきりと感じた。



 その日の朝は、がしゃん! と陶器の割れる音がして、次に畳みかけるかのように、
「はうあっ?!」
「おばかっ!!」
 という大きな声が、私をベッドから叩き起こした。
 目覚まし時計のジリジリとうるさい音で起きるのと、一階から聴こえるやたらと大きな物音で目が覚めるのと、いったいどっちの方が平和な起き方なのだろうかと真剣に考えそうになったので、頭を振って考えるのを放棄した。
 時計を見れば、針は七時をちょっと過ぎた所を差していた。
 用事のない休日の起床時間としては早いと思わざるを得ない時間だろう。
 寒いのをこらえてベッドから出て、締め切ったカーテンを開ける。
 朝の陽射しを白銀色の大地が景気良く反射してくれたおかげで、いじめかと一瞬思ってしまうほどに眩しい光が部屋の中に飛び込んで来る。
「まぶしぃ……」
 目が明るさに慣れるのを少し待っていると、なんとなく空いている感じがするお腹を早々に満たすべきかどうか悩むくらいには体が動き出してきたのを感じ、少し暴れている髪を手櫛で軽く梳かしながら、掛け布団の上に掛けていた半纏を羽織って部屋を出た。
「……はよう。姉さん」
 部屋を出ると、階段を挟んで向かい側にある部屋の主である吏桜が、寝間着の甚平を着たまま、自分の部屋の扉の前に立っていた。
「おはよ」
 元々朝が弱いため、未だ寝ぼけているようで、家ではかけない伊達眼鏡を何故かかけている。
 ぺたぺたとスリッパを鳴らして階段の手摺りに肘をつき、まだ眠そうな目をこちらに向けて項垂れた。
「我が家のお茶目な破壊神は今日も朝から絶好調・・・・・・」
「破壊神って・・・・・・。まあ、否定出来ないけど。せめて少し愛嬌をもたせて、恐竜、とかにしてあげない?」
「恐竜という単語に愛嬌があると思った姉さんの感受性に感動」
「寝ぼけて眼鏡をかけた人に言われてもなあ」
「……え?」
 言われて初めて気づいたのか、眼鏡を外して溜息をついた。
「あんまり寝てないんだ。遅くまで本読んでたから」
 完全に言い訳なのわわかるけど、それはそれで愛嬌があるのでいいかと思い、笑って済ます。
「眠いんならまだ寝とけば?」
「うるさくて寝れない」
「そ」
「姉さんが添い寝してくれれば寝れるかも」
「自分より図体のでかい弟と一緒にシングルベッドで寝るのは窮屈過ぎる。却下却下」
「えー」
「えー、じゃない」
「杏ちゃ~ん!」
 階段をどたばたと駆け上がってきた妹の柚子が、階段を上りきったところで吏桜をキッとひと睨みして、がばっと私に抱きついてきた。
「柚子。そんな程度で僕に勝てるとでも?」
 勝ち誇ったようににやりと笑みを浮かべた吏桜に、ふしゃー! と猫が毛を逆立てて怒っているような反応で、柚子は自分の兄を警戒した。
 相変わらずの兄妹喧嘩に呆れつつも、その喧嘩の原因が姉争奪戦というのだからなんと言っていいものやら。
「吏桜。柚子」
 こうして止めようとしたところで、
「姉さんは黙ってて」
「杏ちゃんは譲らないもんっ!」
 なんて反応が返ってくるからどうしようもない。
「柚子。そういえばさっき、また食器割った?」
「……うん。ごめんなさい」
「柚子は絵描いてるとき以外、集中力なさすぎ。零と百を出せるのはいいけど、中途半端な力加減ってのも覚えなよ。いい加減」
「……わかってるもんっ」
 三年前の私と同じ年となった柚子は、あの時の私より幼い気がするけど、もしかすると、私もこんなもんだったかもしれない。
「次回は気をつけな?」
「うんっ!」
 元気に頷いた妹を、少し呆れた顔で見つめた吏桜だったが、ふと、何かを思い出したように首をかしげた。
「あれ? もしかして今日って、雛祭りだっけ?」
「……あ。そういやそうだね」
「じゃあ取りに行かなきゃ」
 吏桜はそう言うと、眠そうな目を軽くこすり、もたれかかっていた手すりから体を離して部屋に戻る。
 私もそれに倣い、部屋へ戻ろうとすると、柚子がぎゅっと抱きついたまま訪ねてきた。
「なにかあるの?」
「うん。まあね。でも、内緒」
「吏桜は知ってるのに、柚子は知っちゃいけないの?」
「つまるところ、サプライズ! ってやつ? まあ、大人しく待ってなさいな」
「うーん・・・・・・わかったぁ」
 私より少しだけ低い所にある柚子の頭を撫でて部屋に戻り、手早く着替えて食事もとらずに外に出る。
 そこにはすでに吏桜も居て、私が出るとすぐに歩き出した。
「結局柚子の簪も吏桜が一番考えてたよね」
「姉さんが考えてって言ったからでしょ」
 あの時と同じ、なんだか居心地悪そうに、少し不機嫌そうな顔で歩く弟を見て顔がほころぶ。
 本当は、柚子の事も私と同じくらい大好きなくせに、素直にそう言えないのがこの弟らしい。
「何笑ってるのさ」
「いいお兄ちゃんを持って、柚子は幸せ者だねーって思っただけ」
「いい弟を持ってる姉さんも幸せでしょ?」
「自分で言うかー?」
「言っちゃ悪いの?」
「いや、全然」
 二人で一緒に考えて作った、最愛の妹へ送る柚子の簪を受け取りに、私たちはのんびりと雪道を歩いて行った。




【お題】 花簪


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2009⁄03⁄03(Tue) 23:28

comment(2) trackback(0)
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【 コメント 】



今回は「きょうだい」のお話でしたね^^
前回のレンちゃんも 再読しました
yumiさんの描く登場人物は魅力的ですv

>十六回歳を重ねた女の子には、付けられた名と同じ花のついた簪を―――。
この設定もいいですねぇ
思いつくかつかないかの差なんだけど 多分私には出てこない発想かな?

楽しく読ませて頂きました!
ありがとうございます^^
2009/03/04 21:13 URL | 恵以子 [ 編集]

>恵以子さん

今回は正直、ベタ甘禁止な割にはベタ甘書けよっ、ってなお題で困りました。
別な意味でベタ甘だったんで、今回アップの際はどっきどきでしたもん。

前回作品の再読していただき感謝です^^
魅力的な登場人物というのは一つの目指しているところでしたので、そう感じ取ってもらえたのであれば嬉しい限りです。

まあ、前回ちょっとキャラ濃かった気がしますけどね?w
2009/03/07 22:28 URL | yumi@管理人 [ 編集]
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