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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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舞い落ちる紅葉の葉のごとく
愛情シリーズ


第三話 舞い落ちる紅葉の葉のごとく






「ねえ、不良少年」
 お気に入りの白いソファーに寝転がり、この部屋の主に声をかけた。
「何ですか?」
 成人を越したばかりのハンサムな青年が、小さなトレイに二人分のティーセットを乗せてキッチンから出てくると、ソファーの前にある小さなテーブルの上に手際よく準備をしながら答えた。
 私は身体を起こして座りなおすと、あっという間に整えられて行くテーブルを眺めて言った。
「好きな人の心と体。先に欲しいのはどっち?」
「へ?」
 彼の動きがピタッと止まる。
 丁度カップに注ぎ始めていた紅茶が危うく溢れそうになり、慌ててポットの傾きを戻してやる。
 表面張力を起こすほどではないにしろ、慌てて持ち上げればこぼれてしまいそうなほどに注がれた紅茶は、カップに注がれた濃厚な色と、ダージリンよりも香り高い所からしてアッサムだろうか。
 ティーセットの中にはミルクを入れたカップも置いてあるため、ミルクティーにして飲む予定なのだろうが、流石にこのままではミルクを入れると溢れてしまいそうなので、どうやって飲もうか少し悩んでしまう。
「なんてタイミングでなんてこと聞くんですか貴女は」
 止まった時間を再開させた彼は、顔を少し赤く染めて、若干引きつり気味の顔で講義する。
 怒ってはいないものの、いつもの冷静な講義と違って感情的な部分が色濃い。
 実際、何故そんな反応をしたのかは、彼に直接聴かなくてもすぐにわかった。
「ごめん。悪い。すみません。申し訳ない。許して」
「・・・・・・いえ、そんなに謝らなくてもいいですけど」
 一呼吸置いてから、空のままのカップに紅茶を注ぎ始めたので、今度はそれが終わるのを待ってから、改めてもう一度聞いた。
「それって答えなきゃダメなんですか?」
「うん」
「仕事と私とどっちが大切なの? て言う質問と同じくらいに困る質問なんですけど・・・・・・」
「まあ、それは否定しない」
 渋々といった感じで、持っていたティーポットを置き、自分の下唇を軽く噛んで、その唇に軽く握った左手の人差し指をそっと添える。
 彼が何か考えるときに良くする仕草だ。
 しばらく黙って考えていたが、ふと目を上げて此方を見る。
「どっちもいっぺんに欲しいです」
 真っ直ぐ、はっきりと答えた割には、どこか気恥ずかしそうで、普通の人なら躊躇いそうな言葉をぽんぽんと言う彼にしては珍しい反応だった。
 見ているこっちまで気恥ずかしい気持ちになってくる。
 ただ、それだからこそ、彼の純粋な答えであることが伺えた。
「贅沢者」
 溢れそうなほどに紅茶が注がれた方のカップをそっと手にとり、ある程度飲んで程よく減らす。
 それから砂糖とミルクを入れてよくかき混ぜ、それをまた口にする。
 濃厚な味がたまらなくおいしい。
 それを見ていた彼は、「そっちは俺が飲む予定だったんですけど・・・・・」といいながらも、まだ口をつけていないカップの位置を動かして、私の隣に腰掛ける。贅沢者という言葉に対しては、何一つ反論しなかった。
「まあ、私も同じ答えを返したんだけどね」
「誰にです?」
 物凄い速さで切り返されたものだから、認識するまでにゆっくりと瞬きを三回する程度時間がかかった。
 口に含んでいた紅茶が、こくりと小さく音を鳴らして喉を通る。
 そして、答えを返すのにも、認識するのと同じほどの時間がかかった。
「会社の後輩に。女の子だよ」
 私の答えに、彼は安堵したようなやわらかい笑みを浮かべ、ゆっくりと紅茶を飲み始める。
 そのあまりにも露骨な態度に素直に驚いてしまった私は、隣に座る彼をまじまじと見つめてしまう。
 彼と出会ってからそれなりに長いが、こうまで露骨に反応した彼を見たのは初めてだった。
 出逢ったときから大人っぽい表情をする彼だったが、私が見逃していただけで、本当はもっと子供っぽい一面が彼にはあるのかもしれない。
 今度彼の愉快な友人に聴いてみよう。そう密かに心に決める。
「そういえばこの前その後輩に、『先輩は恋人居ないですよね?』って、居ない事を確かめるような聞き方をされたんだよ。酷いと思わない? 確かに居ないけど」
 紅茶を半分ほど飲んで、ティーセットと一緒に運ばれてきた一口サイズのチョコをほうばる。
 安いチョコだが、紅茶がいいためチョコもおいしい。沢山食べれないのが残念だけれど。
「片思いし続ける人間が隣に居るのに遠慮がまるで無いですね・・・・・・」
 隣から伸びた大きな手もまたチョコを掴み、そのまま口に運ばれる。
 甘いものが好きで、太る事や吹き出物など気にしない彼は、一気に三つも食べてしまう。ちょっとずるい。
「OKしてくれればいつでも恋人になりますよ? いつでもウェルカムです」
 出張から帰ってきた頃からここ最近にかけて、何故だか少し自棄気味になってきた彼だが、今回のは今まで出一番投げやりだ。チョコの食べ方も、多分それが少し反映されていたのだろう。それはあくまで多分だが。
 それでも諦めずめげずに当たって砕けろを然として、一緒に居たいと言い続ける彼は凄い。
 頬杖をついて少し不貞腐れた彼を見ながら、ひとしきり楽しい時間を過ごした。








 
 帰り際。
 ヒールを履いて振り向き彼を見た。
「あのさ。勝負しよう」
 ずっと考えていた。
 何年も前からずっと。
「唐突ですね。何です?」
 リビングの電気を消してある所からして、駅まで一緒に来てくれるのだろう。
 日が沈むのが早くなってきた今は、特に何も無いだろうと思いながらも、やはり誰かが一緒に居てくれるだけで安心できる。
 だけど、今日はいらない。
 今日は、一緒に来て欲しくない。
「期間は今日からこの地域で雪が最初に降るまでの間」
 不思議そうな顔で見つめ返す彼としっかりと目を合わせる。
「ここ、そんなに雪が降り易い地域じゃ無いですよ? どれだけ長い期間なんですか」
「わかってるよ。でも期間はその間。最短であれば今年の冬だから数ヶ月。長ければ何年も先」
 引きつりそうな顔に無理やり笑みを作ってみせる。
 ちゃんと笑っているように見えたのかはわからないけど、彼の表情は変わらない。
「・・・・・・勝負の内容は何です?」
「相手にキスをしたら負け」
「・・・・・・は?」
 訳がわからないというのをあっさり通り越して、認識しきれず表情が上手く作れないように、呆けた顔が浮かんでいる。
 それもそうだ。どう考えたって、順序だても何も無く、全てが無茶苦茶なんだから。
 そう、彼にとっては。
「何ですか? その勝負は」
 やっとの事で彼が口にした言葉はそれだった。
 けれど、その答えなんて返さない。返す必要なんて無い。
 彼にどんな思いがあったとしても、どんな事を考えていたとしても、それら全てが関係ない。
「やるの? やらないの?」
 勝負するのは私だけ。
 私は私自身と勝負する。ただそれだけだ。
「断ったらどうなるんですか」
「何も」


 彼が断れば何も変わらない。
 だが、断らなければ――――――。




「やります」




 
 躊躇い無く出された決断。
 それを嬉しく思う反面、してほしくなかったとも思う自分。
 なんて矛盾なんだろう。
 
 
 私は笑った。
 精一杯笑った。
 もしかすると、もうこの笑顔は見せられないかもしれないから。
 今出来る限りの自分らしさを込めて笑った。
 
 
 
 
 
「負けないよ」「負けません」






 そしてやっと動き出す。
 硬く楔を打った歯車が動き出す。









「負けないよ」









 紅色の木の葉が風に吹かれて空を舞い、ふわりと揺られて地に落ちる。
 それはどこか悲しげで、どこか暖かさの残る不思議な光景。
 だからこそ、決心は固まってゆく。
 
 
 
 葉は必ず地に落ち朽ち果てて、朽ち果てた命を他の生命に宿らせるように、私も――――――。
 
 
 
 
 
 
 一陣の風が吹き、三日月の夜空を紅色の葉がまた彩った。





- 舞い落ちる紅葉の葉のごとく - Fin






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2008⁄07⁄14(Mon) 01:17

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職業 : SE
備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

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