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ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

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振り返らない君 <後編>

 彼はもう振り返らない。

 別れるのは悲しかったけど、この答えは、決して間違えじゃなかった―――。







 私の答えが決まるまで、彼は変わらずいつも通りで居てくれた。
 あれがまるで夢で起きた出来事であるかのように。
 私たち二人が進むべき道が途切れていないかのように。
 殆ど変わることのない穏やかな日々が流れてゆく。
 だけど、夢のような出来事を、無かったものではないと示すかのように、あれから一度だって、彼は私に触れなくなった。
 絡ませた指の感触。
 触れ合った時に感じた暖かな温もり。
 愛おしくて堪らない、とろけてしまいそうなほどに甘い口づけ。
 それらすべてが、遥か遠くの出来事のように思えた。
 そう思ってしまうほどに、私は彼を好きで、彼を求めていたことに改めて気づかされる。



 本当に、なんて皮肉なんだろう。




「答え、決まったよ」
 そう言う決心がついたのは、夏休みがもう明日と迫った日の事だった。
 放課後、彼と待ち合わせをしたのは、鍵がかかって外に出れないために滅多に人がこない、出入り禁止となっている屋上へと繋がる扉の前。
 クラスが別々であるためホームルームが終わる時間には少し差があり、私は彼より先に、その場所へとたどり着いていた。
 放課後といっても陽はまだ高く、窓か差し込む日差しは強い。
 五月蠅いくらいに辺りに響くのは、蝉達の求愛の声。
 それが、私の耳には皮肉げに響いた。
 しばらく待っていると、彼は駆け足でやってきた。
「ごめん。遅くなった」
「ううん。―――全然待ってない」
 走ってきたせいなのか、彼の首筋を汗が伝い落ちてゆく。
 くっきりと見える彼の鎖骨の溝をなぞって落ち、ワイシャツに吸い込まれていくその様を、無意識にまじまじと見つめてしまい、これから答えなければならない言葉をより言いにくくした。
「ねえ、本当の事を言って欲しいの」
 思うように出せない声。
 まだ心の奥底ではためらいがはっきりと残っているのを、弥が上にも自覚する。
 言いたくないのに言わなければならないひと事を、必死で絞りだそうと、頭と心の葛藤が始まる。
 離れたくない。
 離れたくなんて無い。
 すごく凄く好きなんだよ?
 言葉では言い表せないほど、凄く、凄く―――。
 渡したくなんて無いの。
 見てほしくなんて無いの。
 私以外の誰かを。
 たとえそれが大切な親友であったとしても。
 私だけを見てほしいの。
 まるで呪にかかったように、彼への思いを心の中で幾度となく叫ぶのを止められない。
 そんな自分が嫌になる。
 けれど、言わなければならない。
 そう言うと、もう決めたはずだ。
 だけど、いや、だからこそ、どうしてもこれだけは知りたかった。
「私の事、ちゃんと好きで居てくれた?」
 私を傷つけないようにと、ずっと自分自身の心を傷つけてきた優しい彼の愛は、本物だったのかを―――。
「僕は、自分でも呆れるくらいに、本当に不器用なんだって、言ったよね?」
 彼は穏やかに微笑んで言った。
「君を愛していた心に偽りは一つもない。今も、昔も―――」
 その言葉で、私の心はいっそ笑ってしまいたくなるほどに満たされた。
 だから、もうこの答えに後悔はしないと決心することが出来た。
「今もまだ、私は、ヨウの事が好き」
 好きで、好きで、どうしようもなく好き。
 だから―――。
 泣きそうになるのをこらえて、精一杯の笑顔を向けて、心に決めていたその言葉を紡ぎだした。




「別れよう」





 彼は静かに頷いて、もうとっくに途切れてしまっていた私たちの道に別れを告げるかのように、強く強く私を抱きしめて、最後に、どこまでもどこまでも優しく囁くように言った。




「ありがとう」









 そして彼は、恋人としては二度と、私を振り返らなくなった――――――。










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2009⁄07⁄05(Sun) 01:05
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
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備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

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