2017 03 << 1234567891011121314151617181920212223242526272829302017 05
PleaseRead
ねこまたまめこは夢を見る。 へお越しいただきありがとうございます。

■ご挨拶■
本ブログは、管理人である yumi が書く、自作小説を主としたブログサイトとなっております。
素人の書く文章であるため、何かと不都合があるかと思いますが、楽しんでいただけたら幸いです。

■著作権について■
本ブログ内全ての著作権は管理人であるyumiにあります。
文章・画像等の無断転用等は行わないようお願いいたします。
※著作権について詳しくはコチラをご覧ください。
Update
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。





--⁄--⁄--(--) --:--


▲pagetop
振り向かせたい彼女 <前編>
 君の事は好きだよ。
 だけど、君よりもずっと、彼女の事が好きになってしまったんだ―――。




 人に嘘をつくのは苦手。
 でも、自分の心に嘘をつくのは得意。
 だから、この感情に気づいた時には、直ぐに自分自身に嘘をついた。
 溢れ出そうとする思いに蓋をして、厳重すぎるほどにしっかりと格子をかけて、隣に居る君以上に好きになった子など居ないと信じ込ませた。
「ねえ、私の事、……好き?」
「好きだよ」
 君に向ける言葉は偽りなんかじゃない。
 けれど、君を好きだと言うたびに、僕の心は激しく軋み、痛み出す。
 

 君の事は好きなんだ。
 それは決して嘘なんかじゃないって、ちゃんと言える。

 だけど―――――。

「ハル」

 もう――――――。

「なあに?」

 駄目だった。

「僕を、振って欲しい」

 君よりもずっと好きになってしまった彼女への想いが、嘘が付けなくなるほど大きくなり過ぎてしまったから――――――。






 夏休みが明けてからというもの、いよいよ受験勉強が本格的に始まった事もあってか、読書離れが進む現在、利用価値がかなり危ぶまれている図書室も、休み時間や放課後になると大分利用者が増えていた。
 元々良く利用している者からしてみれば、人が増えたおかげで大分騒がしくなったのでいい迷惑だ。
 実際、文句を言う人は結構居て、司書さんに愚痴る生徒も良く見かけるようになった。
 良く利用する者の括りに入る僕も、ある理由が無ければ、他の良く利用する生徒同様文句や愚痴を言っていただろう。
「おはよう、アキさん」
「おはよ」
 一人窓辺で本を読んでいる彼女と、いつも通り挨拶を交わす。
 そっけないと思えるほどに短いこの挨拶が、彼女の普段の挨拶だ。
 選択科目が半分以上を占める三年の授業は、選択している科目によって個々人で登校時間や休み時間が大きく異なっている。
 そのため、固定の人物と顔を合わせる事は大分少ない。
 にもかかわらず、クラスは違うが選択科目がほとんど同じなので登校時間がほとんど同じで、さらに行動パターンが似ているという偶然的な一致により、利用者がほぼ皆無である授業中の静かな図書室で顔を合わせている僕と彼女は、ある意味結構異例だ。
 それが、好きな相手となると、それこそ都合よくとらえれば運命ともいえる。
 まあ、それは都合の良すぎる話だけれど。
「今日はどんな本読んでるの?」
「ベタを通り越したドロ甘ラブコメ小説」
「そんな言葉初めて聞いた」
「私も」
 こうして彼女と親しく話すようになったのは、実は、今年の夏休みが明けてからになる。
 それまでは、彼女の友人の彼氏という立場で挨拶を交わす程度。
 彼女を好きになってからは、目に入ったらよく眺めていたりはしたが、雰囲気や挨拶の時の印象以外は、ほとんど人から聞いた話でしか知らなかった。
 だから、初めて会話らし会話をした際、躊躇いのない話し方と少しユニークな言葉使いには結構驚いた。
「面白い?」
「いや、全く面白くない」
「ドロ甘だし?」
「そう。ドロ甘だし」
「それでも読むんだ?」
「話し相手も居なくて暇だったからね」
 あっさりと本を閉じて、目線を真っすぐこちらに向ける。
 彼女は誰と話すにしても、しっかり相手の目を見て会話をする癖がある。
 僕は、目線が向けられるのをわかって居ても、彼女の迷いのない強い瞳が向けられると、逸らしたくないのに目線を逸らしてしまう。
 正直、心臓に悪いくらい、眼差しが強烈だからだ。
 つい逸らしてしまった目線をゆっくりと戻しながら、彼女の席の隣りに腰を下ろす。
 戻った目線の先には、さっきよりもずっと近くなった彼女の顔があって、たまらずまた目線を逸らしてしまった。
 我ながら、情けないことこの上ない。
 今のところ、彼女はそんな僕の反応に気を悪くすることは一度もないので、それは救いなんだけど。
「そういやハルがね、やっと普通に笑えるようになってきたよ」
「……そっか……良かった」
 夏休みを開けても、まだ少し陰りのあった恋人だった彼女の表情を思い出し、それが無くなってきたのだと解ってほっとする。
 知りたいと思っていた事を教えてくれた事に感謝しながら、そういうさり気無い気配りが、また僕の心を大きく揺さぶる糧の一つとなって、彼女への想いをさらに強くさせてゆく。
 はまってしまったら食われてしまう以外に逃れる術のない地獄のようだけれど、その地獄は愛おしくて甘いのだ。

 僕の言葉で会話が途切れた。
 彼女は頬杖をついて窓の外を眺めている。
 僕はその横顔を見つめる。
 穏やかな表情で遠い景色を眺める彼女の横顔は、とても綺麗だと思った。

 僕と彼女の吐息だけが、ほのかに静かな室内に響く。
 会話が無くても、不思議なくらいに居心地がいい時が流れてゆく。
 こんな感覚は、彼女と出会うまで、一度も味わった事がないものだった。
 好きだったのに、ちゃんと好きだったのに、恋人だった彼女と一緒に居た時には感じられなかった、ささやかでいて決定的な違いも、これかもしれない。




 だからかな?

「アキさん」

 伝えたくなった。

「ん?」

 振り向かなくても構わない。
 でも、振り向いて欲しいから――――――。

「アキさんを好きでいても、いいかな?」






 この想いを――――――。





FC2 Blog Ranking





2009⁄07⁄06(Mon) 23:14
ジャンル:小説・文学  テーマ:自作小説  カテゴリー:自作小説
comment(0) trackback(0)
▲pagetop

【 コメント 】


【 コメントを投稿 】












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


trackback URL

| HOME |

Profile

管理人 : yumi
年齢 : 26
性別 : 女
職業 : SE
備考 : ここ最近の優先度。仕事>越えられない壁>睡眠>読書>観劇>弓道>ゲーム>ニコニコ。…どうしよう。なにかものすごく間違っている気がする。

Category
Comment
Link
Counter
Ranking+Alliance
Search
RSSフィード
ブロとも申請フォーム
ねこまたまめこメール便

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード
QRコード
blog chart

▲pagetop

Copyright © 2017 ねこまたまめこは夢を見る。. All Rights Reserved.
template by nekonomimige & blannoin photo by Encyclorecorder
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。